Technology

FIFOによる蓄積を避け、タイムスタンプベースで同期します。

VoluBridgeRTのアーキテクチャは、音声を古い順に処理するFIFO(First-In, First-Out)ではなく、 タイムスタンプに基づいてレンダリング時刻に正確に同期する「Fixed Target」方式を採用しています。

同期方式 タイムスタンプベース
同期指標 Fixed Cursor (Actual)
標準ターゲット 0 samples
詳細設計 Zero Added Latency

Core Model

レンダリング時刻から、最適なサンプル位置を決定します。

一般的な仮想オーディオは安定性のために一定のバッファ(在庫)を保持しますが、それがそのまま遅延となります。 VoluBridgeRTは「在庫量」ではなく、「レンダリング時刻に必要なサンプルが存在するか」を基準に同期を制御します。

sourceSample = renderSample - FixedTarget 標準のFixed Targetは0 samples。同期が成立している限り、VBRT内部での追加遅延は発生しません。

FIFO vs Fixed Target

「遅延」を感覚ではなく、Fixed Cursorで捉えます。

単なる位相差やリードタイムだけでは、実際の遅延を正確に測ることはできません。 VoluBridgeRTは、サンプルのコピーが正しく行われているかを「Fixed Cursor」として可視化し、 極限まで遅延を削ぎ落とした状態を維持します。

観点 一般的なFIFO型 VoluBridgeRT
処理方式 古い順にキューから読み出す レンダリング時刻に同期して読み出す
追加遅延 バッファ在庫として増大しやすい Fixed Targetとして厳密に制御
負荷耐性 バッファで吸収(遅延増) Push / Callbackを分離して診断
可観測性 遅延の内訳が不明瞭 Fixed Cursor / Underflow等を詳細に表示

Zero Added Latency

仮想デバイスでも、「ハード直結時」と同等のレイテンシを目指します。

物理デバイス直結時でも、システムは安定のためにわずかな先読み(Safety)を行っています。 VoluBridgeRTはこの既存の時間を活用し、追加のバッファを積むことなく経路を構成。 「ハード直結と同等の応答性」を理論的かつ実証的に提供します。

Direct: T = S_H + B_V    VBRT: T = S_H + O_saf + D O_saf = D = B_V / 2 の条件下で、VBRTのリードタイムはDirectと完全に一致します。
Fixed Target = 0 Saf Offset = D Callback = D = B_V / 2 Missing = 0
Direct (直接出力)

Tdirect = SH + BV

ハードウェア直結時に元々必要とされる、Safetyとバッファの合計幅。

VBRT (経由時)

Tvbrt = (SH + Osaf) + D

Safetyを前倒しで報告しつつ、後段の物理Callbackと噛み合わせる設計。

Identity (同一性)

Osaf = D = BV / 2

Tvbrt = SH + BV = Tdirect

Conclusion (結論)

ΔLatency = Tvbrt - Tdirect = 0 samples

Fixed Cursorの欠損がゼロである状態が、Zero Added Latencyの成立を証明します。

Lat / Saf

報告値と内部ターゲットを分離して最適化します。

VoluBridgeRTは、システムへ報告するLatency/Safetyと、内部的なFixed Targetを個別に制御します。 これにより、アプリ側には十分な準備時間を与えつつ、内部ではターゲットを増やさない理想的な運用を可能にしています。

1

Virtual Latency

通常は0。必要に応じて固定ターゲットやカスタム設定を適用可能です。

2

Virtual Safety

物理デバイスの特性をミラーリングし、適切な補正を加えてアプリへ伝達します。

3

Saf Offset Auto(D)

物理バッファDを検出し、報告Safetyに動的に反映。余裕のある転送サイクルを構築します。

4

Fixed Target

レンダリング時に遡るサンプル数。標準では0サンプル(=最新)に固定されます。

Device Buffer

静的な報告値ではなく、動的なパケットを監視します。

システム上の設定が512サンプルであっても、実際のアプリが送出するパケットサイズは状況により変動します。 VoluBridgeRTは実際のPush/Callbackパケットを常時監視し、状況に合わせた最適なフォールバックを適用します。

VTarget

ドライバが目指す仮想バッファの方針。Autoによる最適化を含みます。

VProp

CoreAudio層で報告されている仮想デバイスのバッファサイズ。

Push

アプリ(Producer)から実際に渡されているパケットサイズ。

Physical

物理出力デバイスに設定されているバッファ値。

Callback

実際のレンダリング・コールバックの処理単位。

Fixed Cursor

同期の健全性を測る最重要指標(Target / Actual / Copied / Missing)。

Clock

クロック同期では、PLLを補助的に活用します。

設計の主軸は、物理デバイスの時間軸を基準とする「Hard Copy」です。 Rate PLLは、長期的なドリフト(ズレ)の補正が必要な環境において、補助的にのみ機能させます。

RMEのような極めて安定した機器ではPLLを介さない方が純度が高く、 HDMI経由のモニターなどではRate PLLが安定に寄与します。低遅延の核心は、PLLではなくFixed Targetにあります。

Recovery

不連続性をスマートに処理します。

スリープ復帰や出力の切り替え、シーク操作時など、オーディオストリームが途切れる際、 古いバッファを残すとノイズや遅延の原因になります。 VBRTはこれらを「欠損」ではなく「不連続性」として捉え、即座にクリアすることで清廉な状態を保ちます。

Conceal(隠蔽処理)はあくまで一時的な補助です。診断上の数値は、 補完が行われた量を示すものであり、システムの健全性を判断するための重要なデータとなります。

Diagnostics

「低遅延」を数値で確認できます。

VoluBridgeRTの診断機能は、設計思想そのものを体現しています。 レンダリング負荷やDSP処理、CoreAudioの状況を詳細に分解し、 音切れや遅延の根本原因を論理的に切り分けられるようにしています。

Fixed Cursor

低遅延の維持状態を示す中心値。TargetとActualの差を監視します。

Real Add Latency

VBRT内部で実際に発生している遅延の統計値(平均 / p95)。

Arrival Hit / Miss

必要なサンプルがレンダリング時刻までに到達したかの成功率。

Underflow Context

欠損の発生源(Payload / Carry等)を特定し、対策に役立てます。

Load Analysis

処理負荷をスレッドごとに分解。システムの限界を把握できます。

Runtime Info

UI、デバイス、クロック同期など、各モジュールの詳細な動作ログ。

Boundary

設計のゴールは、無駄な「待ち時間」を作らないことです。

VoluBridgeRTが提供するのは「魔法のような遅延消去」ではありません。 仮想ドライバ内部にありがちな「FIFOによる滞留」を徹底して排除する、という誠実な設計です。

物理デバイス固有の特性やOSのスケジューリングは厳然として存在します。 私たちはそれらを隠すのではなく、Fixed TargetやSaf Offsetによって最適に噛み合わせ、 ハード直結と変わらない「本来のタイムライン」を維持し続けます。

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